フリーアドレス廃止の危機!なぜ?
フリーアドレスを導入したものの従業員からネガティブな声が聞かれ、廃止を考えることもあります。フリーアドレスはポイントを抑えて推進するとメリットが豊富ですが、いくつかの懸念点を解消しない場合、業務上でトラブルが起きたり企業成長に支障をきたすことも確かです。ここではフリーアドレスが廃止になりかねない4つの原因を紹介します。
ルールやモラルを守れない従業員がいる
フリーアドレスは自由に働く座席を選択できます。しかし、自由な分、個人のルールやモラルが問われます。たとえば、共用のデスクにもかかわらず私物を置きっぱなしにしている、お昼ご飯のゴミをデスク横のゴミ箱に捨てていて臭いがする、などといったシーン。周囲の迷惑を考えられない従業員をきっかけに、フリーアドレスへの不満が噴出する可能性があります。
セキュリティ面で不安もしくはトラブルが起きた
フリーアドレスで従業員同士の交流が盛んになりコミュニケーションが取れたとしても、セキュリティ面でトラブルが起きると廃止を検討するようになります
たとえば、部署内でのみ共有する資料を誤って他の部署の人のデスクにおいてしまった、共用のワゴンに入れたままにしてしまった、などといった例があります。いくら社内といえども情報漏洩が起こると企業そのもののあり方が問われてしまいます。セキュリティ面でトラブルに発展した場合もフリーアドレス存続が危ぶまれるでしょう。フリーアドレスにおいてセキュリティ問題は初めに意識し、対処すべき課題です。
コミュニケーションが増えすぎて作業効率が低下
フリーアドレスでコミュニケーションが活性化されるといろいろな会話を交わす機会も増えるでしょう。業務中のいわゆる雑談が増えすぎると、さすがに仕事の手が止まる時間が増えたり、一つの作業に必要以上に時間を要したりといった逆効果も考えられます。「隣に座った人と話をしていたらいつも終わっている仕事が残業になってしまった」というケースは褒められるものではありません。
なお、社内のコミュニケーションのあり方については下記のコラムでも解説しています。あわせてご覧ください。
参考記事:社内コミュニケーションの問題を改善するために企業がすべきこととは?
従業員の育成に支障をきたし始めた
フリーアドレスで自由の席に座れるようになると部下と上司が別々の場所で働くようになります。その場合、育成に支障をきたす可能性もあるでしょう。
たとえば、これまで隣の席で部下にマンツーマンで仕事を教えていた場合、席が離れれば細かな業務やニュアンスを伝えにくくなります。それを都度チャットツールで伝えるというのも大変でしょう。本来部下に任せる仕事をなかなか任せられず、上司自身がオーバーワークになる可能性もあるかもしれません。フリーアドレスで部署を超えた交流を目指したものの、「部署内の業務がうまくいかなかった」と狭い領域で課題を抱えることもありえます。
しかし、ここまで紹介した要因はすべて「出社回帰」が関係しています。一時的にテレワークが増加し、「自分のペースで働ける」といった環境に慣れていたからこそ、フリーアドレスのネガティブな面に着目してしまうことに。
ただ、これらの問題は解決できないものではありません。ルールを決めたり正しい改善方法を知ることで従業員がフリーアドレスで快適に働くことが可能です。
フリーアドレスのルールは何がある?
フリーアドレスが廃止に追い込まれる理由としては、従業員各自のモラルやセキュリティ面での懸念、業務が円滑に進まないという課題が挙げられます。これらの課題を解決するには企業や担当者が主体となったルール決めが欠かせません。ここではフリーアドレスの4つのルールを解説します。
①声のボリュームと話題
まずは従業員間でのコミュニケーションに着目してみましょう。従業員同士で話をする際の声のボリュームや話題についてはある程度の取り決めが必要な場合もあるでしょう。
たとえば、会話をする際は周囲に配慮した大きさの声にする。内容によっては、席での会話ではなく休憩室で行う。などといった基本的なマナーのルール化も必要になるかもしれません。「これぐらいはいわなくてもわかるだろう」といったことも、従業員から理解されていない可能性があります。
②整理整頓や私物の管理
フリーアドレスでは席の管理も求められます。私物を置きっぱなしにしない、席を立つ時は整理整頓して元の状態にしてから離れるなどといった基本的なルールを今一度徹底しましょう。また、フリーアドレスにおいてはゴミ箱も問題になりかねません。
ゴミ箱には紙のみを捨てる、飲食物は捨てない、など気持ちよく働ける仕組みづくりを行いましょう。
なお、整理整頓やマナーについては下記のコラムで詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
参考記事:オフィスの共有スペースの問題点やマナー、片づけ方をチェック
③挨拶
細かいことですが、フリーアドレスでちょっとしたストレスになるのが挨拶の程度です。隣に座った人に対してどの程度話しかければいいのか、また挨拶はした方がいいのかなどと「お作法」に悩む従業員も多く見られます。
挨拶については、その日初めて顔を合わせた際に「お疲れ様です」。また席を離れる際に「お先に失礼します」などと基本的なタイミングで問題ないでしょう。挨拶については従業員も聞きづらいもののため、担当者が基準をもっておくのが大事です。
④電話やFAXの取次
オフィス内に電話やFAXが設置されている場合、取次についてもルールを取り決めましょう。とくに電話が特定のデスクに置いてあると「電話をできる限り取りたくない」といったことからその周辺の席が空席になることも。
またFAXにおいても「わざわざ複合機まで取りに行くのが面倒」と捉えられることもあるでしょう。電話については当番制にするもしくはフリーアドレスの中でも座席管理を行いランダムに席を決定するといった方法で対応します。
また、複合機まで行かずに各種デバイスでチェックできるペーパーレスFAXに切り替えるといった方法もあります。
フリーアドレスを推進するには、従業員の無駄な動きを減らすといった観点からペーパーレス導入も検討しましょう。
【実体験】フリーアドレスのよくある悩み
ここではフリーアドレスで発生する4つの悩みを紹介します。フリーアドレスは導入した後に従業員から不満の声が上がるケースがほとんどです。仕事をする上で「ちょっと不便」と感じることが積もり積もって大きなストレスになるでしょう。
ゴミ箱が不適切
フリーアドレスにおいて「ゴミ箱の置き場所が不適切」といった問題は従業員にストレスを与えます。たとえば、ゴミ箱がオフィスの入り口に1つしかないといった場合、従業員はゴミを捨てに行くために席を立つ必要があります。
またゴミ箱が少ない場合、従業員が自分でゴミ箱を用意し、オフィス内が雑然とすることもあるでしょう。たかがゴミ箱されどゴミ箱なのです。
共有ワゴンの使い方がわからない
フリーアドレスではデスクのほかに共有ワゴンを用意することがあります。しかし、自由に使ってもよいとなると「共有ワゴンに何を入れていいのか」「どの程度私物を入れておけばいいのか」という悩みが新たに生じます。共有ワゴンをはじめとした備品を取り入れる際は「何を入れるのか」「どのように活用するのか」といったルール決めが欠かせません。
オンラインミーティングが気まずい
フリーアドレスではオンラインミーティングで周囲の視線が気になります。たとえば、顧客とのオンラインミーティングを実施する場合、話す内容が周囲に全て聞こえるため「どのように思われているのだろう」かと不安が募ります。イヤホンをすることで顧客の声は周囲に聞こえないものの、自分の話し声はダイレクトに聞こえるため緊張してオンラインミーティングでうまく話せないといったこともあるでしょう。
前に座っていた人の痕跡が気になる
フリーアドレスでは前に座っていた人の痕跡が気になり、ストレスになることもあります。たとえば、午後から新しい席に座ろうと思ったものの消しカスが落ちていたりデスクがなぜか濡れていたりすると不快感を覚えます。とくに、潔癖気味の方の場合はストレスが大きいでしょう。フリーアドレスではルールやモラルの共通認識を持ち、次に使う人が気持ちよく働ける環境づくりが不可欠です。
フリーアドレス廃止を予防!企業ができること
最後に、ここではフリーアドレス廃止を避けるために企業や担当者が取り組みたいポイントを4つ紹介します。フリーアドレスは従業員が働く中で不都合と感じるものを減らすことが大切です。
備品は共有のものを増やす
まずフリーアドレスでは共有の部品を多く増やしましょう。従業員が私物を多く使うようになるとオフィス内が雑然としたり、盗難や忘れ物など様々な問題が発生します。また、従業員も私物をたくさん持ち歩く必要があるため、煩わしさを感じます。
文房具をはじめとした消耗品は会社で全て支給する、ブックスタンドやペンタでもシンプルなものをデスクに備え付けておくなどといった従業員が私物を持って移動しない環境を整えましょう。フリーアドレスは最終的に従業員が私物をロッカーにしまったまま身軽に仕事ができることが目標です。共有の備品を増やし、従業員の負担を減らしましょう。
飲食のルールを決める
フリーアドレスでは飲食のルールも定めましょう。飲食は飲み物のみに留める。昼食は別スペースでで取る。などといったものがあります。皆で使うデスクで匂いのする食事をとったり食事を取りながら仕事をしたりは人によって不快感を感じます。あくまで「仕事をする場所」といった観点を持ちましょう。
マナーの周知
整理整頓や飲食のルールなどをはじめとしたマナーの周知も重要です。マナーやモラルは人それぞれのため、価値観をすり合わせる必要があります。具体的に守るポイントを取り決めて重要に共有しましょう。
なお、フリーアドレスを機に従業員に対してマナー教育を行うと、顧客との関係性や従業員同士のコミュニケーションにも効果を発揮します。フリーアドレスのルール構築をきっかけに、従業員のモラル向上を目指しましょう。
フリーアドレスに対応するレスペーパー
フリーアドレスがうまくいかない原因に「紙の資料が多い」といった問題が含まれているなら、レースペーパーの概念がおすすめです。
レスペーパーとは「無理なく紙を減らして業務効率化を行う」という概念です。ペーパーレスになると契約書を全て電子化したり、社内の紙を全てなくさなければいけないといったハードルの高さを感じます。しかし、レスペーパーではあくまでスモールステップで進めるという考え方です。「書類を取りに行く手間を削減する」「資料の共有を簡単にする」といった小さな悩みをまずは解決していきましょう。
まとめ
フリーアドレスが進まない要因としては、人にまつわるものが多く見られます。会社主体でルールを徹底することで従業員がフリーアドレスにおける振る舞いを身につけられるため、取り決めを行いましょう。
フリーアドレスではデスクの整理整頓だけでなく、周りの人を思いやる「人としての心のきれいさ」も求められます。フリーアドレスをきっかけに、従業員のモラル向上を目指し、気持ちよく働ける職場づくりに取り組んでみましょう。
適切なコミュニケーションは従業員にとってメリットが豊富です。あわせてご覧ください。