フリーアドレスとは
フリーアドレスとは、オフィスにおいて従業員が固定されたデスクを持たず、自由に場所を選んで仕事をするスタイルのことを言います。このスタイルは、オフィスの効率的な利用、柔軟な働き方の促進、従業員の生産性向上など、多くの利点があるとされています。
フリーアドレスの歴史
「座席を共有する」という考え方自体はアメリカで既に存在していましたが、「フリーアドレス」という言葉が生まれ、実施されたのは1987年の日本でした。当初の目的は、オフィス不在者の座席を在席者が使用することにより、従業員一人当たりの作業面積を増やすことで、欧米に比べて面積の少ない日本のオフィスにおける苦肉の策でした。
1980年代後半の日本はバブル経済の絶頂期。経済は急成長し、不動産や株式市場は過熱状態。都市部では地価が急騰し、オフィススペースの確保が難しくなっているという状況でした。またこの時期は、日本の労働環境は長時間労働と終身雇用が一般的であり、オフィスワーカーは朝早くから夜遅くまで働くのが普通でした。多くの企業が従業員に固定デスクを割り当てていましたが、会議や出張などで不在になることが多く、スペースの効率的な利用が課題となっていました。
また、フリーアドレスを実施できる土壌として、オフィスランドスケープという概念があります。1950年代～1960年代に欧米で主流だったのは、コリドーオフィス（回廊を設け、その周りに小部屋があり従業員はそこにある座席で仕事をする）やブルペンオフィス（監視しやすいように大部屋に従業員が並び一方向を向き着席する）といったタイプのオフィスでした。そのような形ではなく、人間同士の距離を適切に保ち、満足度や生産性を高めることを目指そうと、1970年にドイツのコンサルティング会社によりオフィスランドスケープという概念が提唱されました。これは、間仕切りを立てずワンフロアを広々と使うためレイアウトの自由度が高く、フリーアドレスに適しています。
コミュニケーションの活性化や、コスト削減や生産性向上など、企業にとっての様々なメリットを得るために、フリーアドレスは浸透していきました。IT技術の発展もそこに拍車をかけ、2010年には働き方改革への取り組みから、多様な働き方に応える形で、2019年のコロナ流行では適切な距離を保って安全に仕事に取り組むためにと、時流に合わせて今も導入企業は増えています。
フリーアドレスの意義
ここで改めて、フリーアドレスの意義についてお話します。
①オフィススペースの効率的な利用
フリーアドレスを採用することで、オフィススペースの利用効率が向上します。固定デスクが不要となるため、オフィス内のスペースをより柔軟に配置することができます。これにより、無駄なスペースが減り、企業はオフィスの賃貸費用を削減できる可能性があります。
②柔軟な働き方の促進
フリーアドレスは、従業員が働く場所を自由に選べるため、柔軟な働き方を実現します。これにより、従業員は自分の業務に最適な環境を選ぶことができ、生産性が向上します。また、リモートワークとの相性も良く、オフィスに出社する日と自宅で働く日を自由に組み合わせることが可能です。
③コミュニケーションの活性化
フリーアドレスは、部署や階層を超えたコミュニケーションを促進します。従業員が固定デスクを持たないため、日常的に異なる人々と接触する機会が増えます。これにより、部門間の壁が取り払われ、新しいアイデアや情報が共有されやすくなります。
④イノベーションの促進
多様な人々が交わることで、予期せぬコラボレーションやアイデアが生まれることがあります。フリーアドレスの環境は、従業員が自由に移動し、異なる視点を持つ人々と交流する機会を増やすため、イノベーションの促進に寄与します。
⑤スペースとコストの節約
固定デスクが不要になることで、オフィスの設計や運営にかかるコストを削減できます。デスクや椅子の数を必要最小限に抑えることで、家具費用やオフィススペースの賃貸料が削減されます。また、必要な設備も少なくなるため、運営コストも低減されます。
⑥ワークライフバランスの向上
従業員が働く場所と時間を柔軟に選べることで、ワークライフバランスの向上が期待されます。仕事と家庭の両立がしやすくなるため、従業員の満足度やモチベーションが向上します。これにより、企業のパフォーマンスも向上するでしょう。
フリーアドレスの課題
フリーアドレスには多くの利点がありますが、いくつかの課題も存在します。
以下に主な課題を挙げます。
①パーソナルスペースの確保
固定デスクがないため、従業員は自分のパーソナルスペースを確保することが難しくなることがあります。特に、個人情報の管理や、集中力を必要とする作業を行う際には、プライバシーの確保が課題となります。
②セキュリティの問題
自由な移動が可能なフリーアドレスでは、情報セキュリティの管理が難しくなることがあります。機密情報の取り扱いや、デバイスの盗難防止など、セキュリティ対策を強化する必要があります。
③チームの一体感の低下
フリーアドレスでは、従業員が固定の場所に集まらないため、チームの一体感が低下することがあります。特に、プロジェクトチームや部署ごとの連携が重要な場合、コミュニケーションの方法を工夫する必要があります。
④適応の難しさ
フリーアドレスでは、従業員が固定の場所に集まらないため、チームの一体感が低下することがあります。特に、プロジェクトチームや部署ごとの連携が重要な場合、コミュニケーションの方法を工夫する必要があります。
まとめ
従業員がフリーアドレスの環境に適応するには時間がかかることがあります。
特に、固定デスクに慣れている従業員にとっては、新しい働き方への順応が課題となることがあり、適切なトレーニングやサポートが求められます。
