ABWは時間と場所を問わず、社員の自由な働き方をサポートする新しい考え方です。フリーアドレスやテレワーク、リモートワークよりも自由度の高い働き方で、従業員の満足度や会社への定着率向上につながります。ABWとはどのような考え方なのか、導入によるメリット・デメリット、さらには導入にあたっての手順を紹介します。
ABWとは生産性が上がる働き方
ABWとは、「Activity Based Working」の頭文字を取った言葉です。ABWは特定の働き方を表す言葉ではなく、仕事内容に応じて、仕事をする場所や時間を自由に選び、生産性を高めることを目的とした概念です。
ABWでは時間と場所の制約を受けず、社員が自由に働いて、能力を発揮できる環境づくりを目指します。ABWによって社員は仕事に意欲的になり、エンゲージメントを高め、社員同士のコミュニケーションも活性化します。
また、会社としてはABWをサポートするために、業務のIT化、ペーパーレス化の推進などの施策を行います。ABWは単なるフリーアドレスとは違い、自由な働き方を目指すものとして注目されています。
フリーアドレスとの違い
フリーアドレスとの違いをもっと具体的に見ていきましょう。ABWをフリーアドレスと混同する人もいますが、2つは全く別のものです。
フリーアドレスとはオフィス内に固定席を設けず、その日の気分や作業内容に応じて席を選べるシステムです。あくまでもオフィス内に用意された席を自由に選べるだけで、働く場所そのものに自由度はありません。
ABWはオフィス以外の場所でも、社員が働きやすい場所で働けることが最大の違いです。自宅・カフェ・コワーキングスペース・サテライトオフィスなど、社員はどこでも好きな場所を選んで働くことができます。
フリーアドレスよりも自由度が高く、個人のライフスタイルに合わせた働き方が実現できるワークスタイルと言えます。
ABWで生産性が上がる理由
ABWによってなぜ生産性が上がるのでしょうか。その理由について解説します。
仕事しやすい環境を自分で選べる
前述の通り、ABWは自分の働きやすい場所を選び、集中しやすい環境を自分で生み出すことができます。オフィスという空間に縛られることがなく、それぞれの個性を活かした働き方を実現しやすいのです。
仕事を最大限のパフォーマンスが発揮できる場所で進められるため、生産性が上がりやすくなります。
働く場所を変えることで、気持ちを切り替えやすい
毎日同じことを繰り返すと、思考停止に陥りやすく、新しいチャレンジを目指す意欲も落ちていきます。ABWでは自ら働く場所を変えることで、モチベーションの低下を防ぎ、常にフレッシュな気持ちで仕事をすることができます。
仕事をしていると、集中できない、アイデアが上手くまとまらないことがあります。そんな問題を、場所を変えることでクリアした経験をお持ちの方も多いでしょう。マンネリ化しやすい日々の仕事に対して、働く場所を変えることで気持ちを切り替えることができます。
オフィスのペーパーレス化を促進できる
従来のオフィスでは紙であふれていました。仕事で作成する書類はもちろん、見積書や契約書、社内の連絡物など、さまざまな書類があふれていました。また、書類の保管にはスペースが必要なうえ、本来なら不要な書類がいつまでも山積みになっているケースも少なくありません。
ABWでは情報共有は、紙ベースではなく、オンラインベースになります。ABW導入を契機に、ペーパーレス化やワークフローの見直しを行うことができます。
個人の状況に応じた働き方が実現しやすい
社員一人ひとりは本来、生活スタイルが異なります。従来はオフィスで同じように仕事を進めることが強いられ、負担や無理が生じることがありました。
ABWは、社員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方が実現しやすく、社員の仕事に対するモチベーションも高まります。
優秀な人材を確保しやすくなる
ABWは働く場所を問いません。オフィスから遠く離れた場所に住む、優秀な人材もABWなら社員として働いてもらうことができます。
ABWを導入していることが広く伝われば、「この会社で働きたい」と考える人も自然と増えてくるはずです。働きやすい環境であれば、優秀な人材が離職することも防げます。
ABWのメリット
ABWを採用するメリットを改めて見ていきます。
社員のエンゲージメント・満足度が高まる
ABWで、自由な働き方が実現できれば、社員のエンゲージメントや満足度は高まります。エンゲージメントとは会社への愛着や一体感であり、高いほど離職率は低下します。
オフィスのコストカット
ABWでは働く場所をオフィスに限定しないため、オフィス自体の省スペース化・効率化につながります。企業にとって、オフィスのコストを抑えられることは、大きなメリットといえます。
社員のクリエイティビティを刺激
ABWは働く場所を制限することなく、社員の多様な働き方をサポートします。社員が自らが望む、好きな環境で仕事できることは、社員の能力、クリエイティビティを最大限引き出すことにつながります。
距離や家庭の事情でオフィスに出勤できない人材でも、ABWなら思う存分、仕事をすることができます。優秀な人材を確保し、能力を発揮する環境を整えることは、これからの企業にとって重要なことです。
ABWのデメリット
ABWにはメリットが多い反面、デメリットもあります。
管理は困難
ABWはオフィスに出勤する必要性がないため、管理の立場からは目が直接届きにくいことになります。会社が社員の業務内容・進捗状況を把握するには従来とは違う工夫が必要になります。
定時報告や日々の進捗を報告できる仕組みを、最新のITツールを活用して構築する必要があります。
コミュニケーション不足に陥りやすい
ABWではミーティングなどの機会がなければ、社員が1カ所に集まって顔を合わせることはありません。同じチーム・部署にいながら、お互いの顔を直接見ることなく、仕事が終わることになります。
社員同士、あるいは上司とのコミュニケーションが不足したり、コミュニケーションに偏りが生まれやすくなります。チャットツールなどを活用して、コミュニケーションを円滑化・活発化する必要があります。
社員の自己管理能力が求められる
ABWでは、社員一人ひとりが自主的に考え、業務を遂行します。高い自己管理能力が必要となり、新人や中途入社の方が逆にハードルを感じてしまうこともあります。
ABWを導入する際は、社員が自ら業務管理を行い、能動的に仕事ができる仕組みを整えることが重要です。
ABWに向いている会社
ABWに向いている会社とはどのようなものか解説します。
ABWの目的が社内で共有されている
ABWは多様な働き方を尊重できますが、導入する目的が共有されていないとうまく機能しません。ABWを導入しても、その自由度や可能性を生かしきれないケースがあります。ABW導入で目指すことを社内で共有できる会社がABWに向いています。
管理者と社員に信頼関係がある
ABWでは社員の業務管理は難しく、社員の自主性に負う部分が多くなります。管理職と社員の間に信頼関係があり、業務の方向性が明確になっていることが大前提です。
普段から管理職と社員がコミュニケーションを取り、明確な方針のもとで仕事を進めている会社がABWの導入には向いています。
ABWを導入できる業種である
ABWの導入には、そもそも業種によって向き不向きがあります。医療や介護、建設業、接客業などはABWには向いていません。
インターネットを日常的に利用する職場で、かつ電話対応や対面での応接が少ない業種が特にABW導入に向いています。
ツール導入に柔軟な対応ができる
ABWを活用するには、チャットツールや業務管理アプリなどを活用することが必須になります。新しいツールの導入、活用に柔軟に対応できる会社がABWに向いています。
ABW導入の方法・手順
ABWを導入する手順について紹介していきます。
導入前の調査
まずは、社員の業務手順、社員のニーズを確認するところから始めます。ABWへの対応が難しい社員が存在するケースもあり、一方的な会社側の考えだけで進めてはいけません。
従業員のABWへの認識を深める意味でも、社員一人ひとりの声を聞くことが大切です。
導入計画の立案
導入が決まったら、どのようなシステムで運用すべきなのかを検討します。現状の業務フローとABW導入後のフローを分析し、どのような形で運用すべきかを検討します。
ABWを導入する目的を明確にし、起こり得るトラブルや問題点なども想定して計画を立案します。
運用開始
運用を開始した後は、社員の働き方や仕事の進め方を定期的に確認します。導入直後は混乱も多くなるため、研修やミーティングの場を設けて、ABWへの理解を深めてもらいます。
導入後の評価
ABW導入後も定期的に社員のニーズを調査し、評価を行います。調査結果は社員にフィードバックし、必要に応じて新たな施策などを検討します。
PDCAサイクルで改善点を発見・検討し、より良い運用方法を構築していくことが大切です。
ABWの活用で自由な働き方を実現しよう
ABWという概念は、比較的新しいものです。近年は新型コロナウイルス感染拡大もあり、新しい働き方が模索されてきました。
そうした中でABWやフリーアドレスは注目を集め、すでに多くの企業でテレワークやリモートワークが導入されています。その中でもさらに自由度の高いABWは、社員のライフスタイルをサポートする働き方といえます。
新しい働き方が生まれているなか、社員の自由な働き方を実現するABWに注目してみてください。
まとめ
ABWとは生産性が上がる働き方
ABWとは「Activity Based Working」の略で、仕事内容に応じて仕事をする場所や時間を自由に選び、生産性を高めることを目的とした概念。フリーアドレスがオフィス内の固定席を自由に選ぶスタイルなのに対し、オフィス以外でも働くことができる自由度の高いワークスタイル
ABWで生産性が上がる理由
- ・仕事しやすい環境を自分で選べる
- ・働く場所を変えることで、気持ちを切り替えやすい
- ・オフィスのペーパーレス化を促進できる
- ・個人の状況に応じた働き方が実現しやすい
- ・優秀な人材を確保しやすくなる
ABWのメリット
- ・社員のエンゲージメント・満足度が高まる
- ・オフィスのコストカット
- ・社員のクリエイティビティを刺激
ABWのデメリット
- ・管理は困難
- ・コミュニケーション不足に陥りやすい
- ・社員の自己管理能力が求められる
ABWに向いている会社
- ・ABWの目的が社内で共有されている
- ・管理者と社員に信頼関係がある
- ・ツール導入に柔軟な対応ができる
ABW導入の方法・手順
- 1.導入前の調査
- 2.導入計画の立案
- 3.運用開始
- 4.導入後の評価