新しいオフィス形態として「ホテリング」が注目を集めています。ホテリングとはどのようなスタイルで、どんな効果や問題点があるのでしょうか。またホテリングの導入に際して知っておきたい、オフィスの意義や失敗例、問題を解決する方法についてもご紹介します。
ホテリングとは?
「ホテリング」とは、英語の「Hotelling」からきた言葉。もともとアメリカで生まれたオフィススタイルで、オフィスに設置する席数を社員数より少なくして、社員が出社するときは自分で席を予約して座ります。似たようなオフィス形態に、社員の席が固定されておらず、出社した社員が自由に好きな席に座る「フリーアドレス」があります。
しかし、フリーアドレスは座席数が社員数と同じか多く設定されているのに対し、ホテリングは座席数が社員数より少ないという点が異なります。コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及し、オフィスに出社して働く人が限られるようになりました。そのような中、オフィスのスペースやコストを削減できる方法として、このホテリングが注目されています。
ホテリングの効果とは?
ホテリングを導入する効果として顕著なのは、オフィスのスペースを小さくしてコストを削減できること。実際にオフィスに出社する社員が限られているのなら、その分スペースをダウンサイジングして家賃を抑えられます。
また、ホテリングのもう一つの効果として、社内のコミュニケーションの活性化が挙げられます。所属部署を問わず、さまざまな社員が近くの席に座ることで、普段は話す機会の少ない社員同士の間に新しいコミュニケーションが生まれ、創造性の発展が期待できます。
ホテリングでよくある問題点とは
ホテリングには企業にとっても社員にとっても多くのメリットがある一方で、ホテリングならではの問題点もあります。
問題点①予約システムが使いこなせない
ホテリングでは、出社する社員がその日に座る自分の席を予約するため、予約システムの導入が必要となります。しかし、そのシステムが複雑で使いにくかったりすると、社員が十分に使いこなせないという問題が出てくる可能性もあります。
問題点②人気の席・不人気の席ができる
オフィスの中には、静かで居心地がいい席と、人の往来が激しくて集中しにくい席が発生してしまいます。席を予約して座るホテリングでは、人気の席とそうでない席が出てしまうことも考えられます。すると、特定の席ばかりに予約が集中してしまう可能性もあるでしょう。
問題点③ソーシャルディスタンスを確保できない
自分が座る席を自由に予約するホテリングでは、社内で一定のソーシャルディスタンスを確保することで、感染症予防につなげることができます。しかし、人気の席に予約が集中してしまうと、ソーシャルディスタンスの維持が難しくなる場合も考えられます。
ホテリングを導入する際に確認したいオフィスの意義とは?
ホテリングの導入を考える際、改めてオフィスは何のためにあるのか、その意義について考えてみることをおすすめします。リモートワークで、遠方にいても画面越しに会話をして同じ仕事を行う環境ができたとしても、直接顔をあわせてディスカッションをすると、心理的にも距離が近くなり、お互いの心が開かれやすい傾向にあります。
また、社内で社員同士がコミュニケーションをとることで、チームワークやアイデアが生まれることも考えられます。だからこそ、リモートワークを導入しながらオフィスを維持する企業が多いのでしょう。
ホテリング導入の失敗例とは?
ホテリングを導入したものの、社員に定着せず、制度の変更を余儀なくされる失敗例もあるようです。
失敗例①席が固定化されてしまう
せっかくホテリングを導入しても、出社するたびに席を予約することを面倒だと感じてしまう、お気に入りの席があるなどの理由でいつも決まった社員が決まった席に座ってしまうなどにより、席が固定化されるケースがあります。席が固定化されてしまうと、ホテリングを導入している意味が薄れてしまう上、社員同士の交流も限定的になってしまいます。
失敗例②社員に制度が浸透しない
そもそも何のためにホテリングを導入するのか、その目的が不明確で、社員に目的が共有されていないと、制度がなかなか社内に浸透しないことも考えられます。
失敗例③社員間の指導が難しい
新しく入社した社員に先輩社員が指導する際、近くの席に座っていないと指導がしづらいことがあります。ホテリングでは、社員教育が難しいと思われてしまう場面もありそうです。
ホテリングの問題点を解消する方法とは?
失敗することなくホテリングを導入するためには、さまざまな問題点を解消することが必要になります。
解消法①社員にとって使いやすい予約システムを使う
ホテリングをスムーズに導入し、社内で浸透させるためには、まず使いやすい予約システムを選ぶことが重要です。使い慣れていない人でも、感覚的にすぐに使えるツールがあれば、席の予約もしやすくなります。また、そのようなツールを導入すると、誰がどの席に座っているのか一目でわかるようになり、社内での業務が効率的になるでしょう。
解消法②履歴データから定期的に改善を行う
ホテリングを導入する過程で、それぞれの企業ごとに課題が浮かび上がってくることがあります。課題に対して予約システムの履歴データをもとに、定期的に改善策を立てることをおすすめします。履歴データと、さらに社内から出た課題があれば、それらをどのように解決できるか対策していくことをおすすめします。具体的には、同じ席を何度も予約するとアラートが表示される、席の予約に制限をかける、などの改善策が考えられます。
解消法③予約ルールを作る
ホテリングは社員数より座席数が少ないため、出社する社員が多すぎると、オフィスにあふれてしまうことにもなりかねません。そこで、どの社員がいつ出社するのかなどの出社率の目安なども含め、社内でルールをつくりましょう。
解消法④ソーシャルディスタンスを確保したレイアウトにする
コロナ禍において社内でソーシャルディスタンスを保つためには、人が密集せず、一定の距離を保てるように社内のレイアウトを決めておくことが大切です。社員が安心してオフィスで働けるようにレイアウトを設計できるとよいでしょう。
ホテリングは新たなオフィスの形
社員はオフィスに出社して仕事をするのが当たり前だった時代から、コロナ禍をきっかけに、場所にこだわらないリモートワークのような働き方が一般的になる時代へシフトしてきています。そのような中、オフィスの意義について改めて考える企業も多いのではないでしょうか。
ホテリングは、オフィスで働くメリットと、社外で仕事をするメリットの両方を活かした新しいオフィスの形と言えるでしょう。
まとめ
ホテリングとは?
オフィスに設置する席数を社員数より少なくして、社員が出社するときは自分で席を予約して座るオフィススタイル
ホテリングの効果とは?
- ・オフィススペースを小さくしコスト削減できる
- ・社内コミュニケーションが活性化し創造性の発展が期待できる
ホテリングでよくある問題点とは
- ・予約システムが使いこなせない
- ・人気の席・不人気の席ができる
- ・ソーシャルディスタンスを確保できない
ホテリングを導入する際に確認したいオフィスの意義とは?
ホテリング導入の際には「オフィスの意義」を改めて考えることがおすすめ。
オフィスで直接コミュニケーションを取ることは社員同士の信頼を深め、仕事にも良い影響を与える。
ホテリング導入の失敗例とは?
- ・席が固定化されてしまう
- ・社員に制度が浸透しない
- ・社員間の指導が難しい
ホテリングの問題点を解消する方法とは?
- ・社員にとって使いやすい予約システムを使う
- ・履歴データから定期的に改善を行う
- ・予約ルールを作る
- ・ソーシャルディスタンスを確保したレイアウトにする
ホテリングは新たなオフィスの形
ホテリングは、オフィスで働くメリットと、社外で仕事をするメリットの両方を活かした新しいオフィスの形
ホテリングとは?導入のポイントを解説