コロナ禍をきっかけによく耳にするようになった「フリーアドレス」。そもそもどういったもので、どのようなメリットとデメリットがあり、どんな組織におすすめなのでしょうか。フリーアドレスを成功させるためのポイントと導入方法・手順を解説します。
フリーアドレスとは?
フリーアドレスとは、社員の席が固定席ではなく、出社したときに自由に好きな場所に座るシステムのこと。ノートパソコンなどを活用して、自由に好きな場所で仕事が出来ます。
これまでの「自席」という概念を無くし、空いている席や共有スペースで所在地(アドレス)が自由(フリー)なので「フリーアドレス」と呼ばれています。
2020年は一時的に感染陽性者数が減った時期があったため、収束を期待して勤務形態やオフィス環境の大幅な変更を見合わせていた企業も、コロナ禍の長期化が判明した年明けから、2021年度の予算の組み直し、オフィスの移転や勤務形態の変更を検討しています。弊社でも、オフィスの引っ越しやフリーアドレス化を検討しているというお客様の声をよく耳にします。
では、多くの企業で導入を検討しているフリーアドレスのメリットとは、何なのでしょうか。もちろんフリーアドレスに向かない業種や職種もあるので、ここでは導入に向く業種や職種にとって、という前提で話を進めます。
フリーアドレスのメリット・デメリットとは?
さまざまな企業がフリーアドレスの導入を進めています。コロナ禍をきっかけに、より自由な働き方が求められるようになり、働き方の改革を進める動きも追い風となって、フリーアドレスが注目されています。では、フリーアドレスにはどのようなメリットとデメリットがあるでしょうか。
フリーアドレスのメリット
フリーアドレスは、社員にとっても企業にとっても、さまざまなメリットがあります。
コストの削減とスペース効率の向上
従業員全員の席を用意しないのだから、必要とするオフィス面積は確実に縮小できます。となれば、言うまでもなく経費の削減につながります。これまで固定席を設置していた空間をそのまま確保しておくなら、ミーティングスペースやレクリエーションエリア、あるいは社外との協業スペースなどに有効活用できます。コスト削減は一番分かりやすいメリットだといえるでしょう。
コミュニケーションの活性化
これがもっとも重要視されていることかもしれません。席が固定されていなければ、これまで話す機会の少なかった他部署メンバーとの交流機会がぐんと増えます。部署や部門を越えて従業員同士がコミュニケーションを取ることで、新たな発見やアイデアが生まれ、思いがけない成果を得られる可能性は大きいでしょう。それが結果的に生産性の向上につながることも期待出来ます。プロジェクトにおいても同じ目標やゴールを共有できれば、モチベーションを維持することができ、成功する確率は格段に上がります。わざわざ会議室の空きを確認して予約しておかなくても、空いている席を利用すればすぐにでもミーティングができるのだから、時間のロスもストレスもありません。また、自由な座席での業務は、気持ちをリフレッシュさせる効果があることから、メンタルヘルス対策にもなるしストレスケアにも有効です。
自律的行動力の強化
毎日決まった席で仕事を始めるのと、その日の業務内容を考えて席を選択ことから始めるのとでは思考回路への刺激が異なります。これからはどのような勤務形態にしろ、環境変化のスピードに適応し、顧客の多様なニーズに応えられる応用力がますます必要になります。それには常に自律的な思考がモノをいうはずです。自律的行動力はすぐに数値化できませんが、コミュニケーションの活性化から生まれる成果同様、個人にも組織にもプラスに作用することは間違いありません。
フリーアドレスのデメリット
一方、デメリットとしては以下のようなことが考えられます。
組織力・チーム力が低下する可能性
従来のオフィスでは、同じ部署や同じチームの社員はまとまって座っていました。多くの場合、複数の机をくっつけて島をつくり、一番の上司は島を見渡せる位置に座っていました。しかしフリーアドレスでは、同じ部署や同じチームの社員でも、離れた席に座ることになります。そのため、部署やチームの一体感が薄れ、チーム力が低下することが懸念されます。席は離れていても、チャットツールなどを活用してコミュニケーションを図ったり、オープンスペースで雑談したり、定期的な会議でディスカッションを重ねるなど、組織・チームとしての力を高めていくことが必要になります。
社員の業務管理が難しい
フリーアドレスでは、これまでのスタイルとは異なり、上司と部下が離れた席に座ることになります。上司にとっては、部下の仕事内容や業務の進捗状況を把握することは難しくなり、アドバイスやフォローが難しくなります。同様に、新人の教育や指導も難しくなる面があります。新人や若手社員が、近くの先輩社員のスキルを見習うというような機会も生まれにくくなるため、スキルアップや人材育成には、これまで以上に意識的に取り組む必要があります。
ストレスに感じる社員も
フリーアドレスを導入すると、これまでのように「出社したら自分の席に座り、仕事を始める」という当たり前のスタイルが変わることになります。荷物やPCなどの私物は個人ロッカーに保管し、退社するときはデスクには何もない状態にしなければなりません。資料を多く抱えている社員は、それらを毎日デスクまで持ってくる必要が生まれますし、毎日どの席に座るかを考えることにストレスを感じる社員もいるでしょう。
ひとつひとつは小さなことですが、社員にとっては毎日のことであり、積み重なると大きなストレスになってしまうことが考えらえます。
フリーアドレス導入はこんな組織におすすめ
フリーアドレスはどんな企業でも導入できるのでしょうか?業種や仕事内容によって、フリーアドレスの導入に向いているケースと、そうでないケースがあります。ここではフリーアドレスの導入におすすめの組織の特徴を紹介します。
モバイルワークが進んでいる
モバイルワークとは、オフィス以外にも自宅や外出先のカフェなどでも仕事ができるスタイルのこと。特に営業職は、ノートパソコンを持ち歩き、外出中の隙間時間を有効利用することが不可欠です。そのようなモバイルワークがすでに行われている企業は、社員はノートパソコンで仕事をし、リモートでのやりとりに慣れているため、フリーアドレスの導入もスムーズでしょう。
ペーパーレス化が進んでいる
人事、経理、総務などをはじめ、書類を多く扱う部署では、ペーパーレス化が進んでいるとフリーアドレス導入も容易になります。紙ベースの業務が残っていると、ファイルに綴じて保管するなど、物理的な保管場所が必要になり、その場所に固定されてしまいます。
ペーパーレス化が進んでいれば、どこに座っていても、ネットワークを使って、書類のやりとりや確認ができます。フリーアドレス導入は、座る場所だけの問題ではなく、業務改善と直結した取り組みと言えます。
部署を横断したプロジェクトが多い
フリーアドレスでは、部署が異なる人同士が隣の席に座ることが多くなり、部署を超えたコミュニケーションから新しいアイデアが生まれることもあります。るり−アドレスの大きなメリットと言えます。
もともと複数の部署の人が関わるようなプロジェクト形式の仕事が多い企業なら、フリーアドレスの導入はそうしたプロジェクトにもプラスに働くことが期待できます。部署を超えたコミュニケーションが活発になれば、組織全体の活性化にもつながります。
フリーアドレスを成功させるためのポイント
フリーアドレス導入を成功させるためには、導入前からいくつかの対策を講じておくことが大切になります。
運用ルールを作る
ひとくちにフリーアドレスといっても、企業ごとに運用方法は異なります。フリーアドレス導入を成功させるには、それぞれに最適な運用ルールを決めることが大切です。
例えば、電話や来客があったときの対応方法や取り次ぎの手順、雑談や会議、飲食OKのスペースはどこにするか、会議などで離席するときはどうするか、退社時にはデスクの上に荷物を残さないなど、さまざまなルールを決めておく必要があります。
各種ツールを活用する
フリーアドレスを導入する企業が増えるに従って、便利なツールも登場しています。例えば、出社したときに座る席を自動で決めるシステムは、「どの席に座るか」を考えるストレスを減らしてくれます。また前日に席を予約できるシステムや、どの席に誰が座っているか把握できるシステムなど、さまざまなツールがあります。
また部署間・チーム間でのコミュニケーションツールはもちろん、社員のプロフィール紹介ツール、雑談ツールなども登場しています。
デスクやロッカーなどを整備する
フリーアドレスには、デスクのほか、一人ひとりの荷物や書類を保存しておくためのロッカーの整備も必要になります。デスクは、同じタイプのデスクで統一するのではなく、複数のタイプを揃え、いろいろな場所に座ることが楽しくなるような仕組みを作ることもできます。通常の作業のほかに、集中して作業できる仕切りのついたデスク、逆に雑談やちょっとしたディスカッションができるタイプのものなどもあります。
フリーアドレスの導入方法と手順について
フリーアドレスを導入する場合、以下のような手順で進めていくといいでしょう。
1. 導入の目的を決める
フリーアドレス導入の目的は、企業によってさまざまです。「社内コミュニケーションを活性化するため」「柔軟な働き方を実現するため」「クリエイティビティを向上させるため」など、目的を明確にします。そして目的を社員に周知し、全員で共有することが重要になります。
2. 運用ルールを決める
上述したように、フリーアドレスを成功させるためには運用ルールを決めることが不可欠です。もちろん事前には想定できなかった問題も出てくるでしょう。その場合は都度、ルールを見直していきます。導入後しばらくは、運用ルールの見直しをリードするチームを作っておくとよいでしょう。
3. レイアウトデスクを決める
フリーアドレスを全社で導入するのか、一部の部署から導入するのかなどを決定したうえで、オフィスのレイアウトを検討します。従来の仕事の進め方から大きく変わるので、外部の専門家の力を借り、社内でプロジェクトチームを作って、検討を進めていきましょう。
デスクやチェアなどの備品は、もちろん予算次第ですが、フリーアドレスの普及とともに、さまざまなタイプの製品が出ています。従来のイメージから脱却し、思い切った変化を作り出してください。
4. 運用を開始する
実際に運用をスタートさせたあと、しばらくは調整期間として、社員からのフィードバックを積極的に集めるようにします。大企業の場合は、まずは一部の部署で試験を行うことがおすすめです。
運用しながら問題点や不都合が生じていないか社員から聞き取り、レイアウトや運用ルールの見直しを進めていきます。
フリーアドレス導入の注意点
導入前の従業員の不安として「近くに座った他部署のメンバーとコミュニケーションが取れるのはいいですが、周囲の会話や雑音が気になって仕事に集中できないのではないか」というものがあります。これに対しては、業務目的にあったタイプ別の席、たとえば集中したいときは会話を控える個別席、チームで話し合いも必要だと思われる場合はメンバーが集まれる座席選択ができるようなシステムを導入すれば解決できます。当社が提供している「Your Desk(ユアデスク)」はその課題解消に最適なシステムです。ソーシャルディスタンスを確保した座席指定も可能ですし、利用ログが取得できるため行動履歴も追えます。コロナ禍の今だからこそ発揮される心強い機能です。
YourDeskは、フリーアドレスの円滑なコミュニケーションを実現する座席管理システムです。
次に「資料や書類、私物などはどうするのか」という疑問もあります。これは個人用キャビネットを設置することでクリアできます。個人用キャビネットから仕事に必要なものだけを取り出し、業務終業時にそれらをキャビネットに片付けるというスタイルです。フリーアドレスでは、書類や紙の資料は電子化してネットワークで共有するようになるため、ペーパーレス化はますます進みます。ペーパーレス化は印刷や書類の維持管理費の削減だけでなく、書類の紛失や盗難防止といったセキュリティリスクの防止にも有効です。さらにデスクにはパソコンや必要最小限の書類しか置かないので、オフィス内は常に整頓され、美化が保たれるという利点も付加されます。
フリーアドレスは、従業員が働きやすくなるための手段
固定席がなくても業務を進行することができると認知され、フリーアドレスは増加傾向にあります。一方、非効率な部分をITツールで補う方法もわかってきました。ただし、同じ業種でも、企業によって理念やワークスタイルは異なります。在席率やテレワーク率も、部門やグループごとに差があるため、フリーアドレスが適しているか、適していないかは判断に迷うこともあるかもしれません。
フリーアドレスは、あくまでも、より従業員が働きやすくなるための手段のひとつです。課題が浮上したら、その都度「何のためのフリーアドレスか」という原点に立ち返りつつ解決策を講じていけば、最適な働き方改革が進められるでしょう。
まとめ
フリーアドレスとは?
固定席ではなく、出社したときに自由に好きな場所に座るシステムのこと。
フリーアドレスのメリット・デメリットとは?
メリットはコストの削減とスペース効率の向上、コミュニケーションの活性化。自律的行動力の強化、業務の効率化など。
デメリットは部署やチームの一体感が薄れ、チーム力が低下することが懸念される。社員の業務管理が難しく、ストレスに感じる社員もいるという。
フリーアドレス導入はこんな組織におすすめ
フリーアドレスの導入が、業務改善と直結した取り組み。モバイルワーク、ペーパーレスが進んだ企業、部署間を横断するプロジェクトが多い組織に最適。
フリーアドレスを成功させるためのポイント
組織ごとに最適な運用ルールを定めることが重要。
手間や面倒、ストレスに感じる要素は自動化ツールを活用し不満が出ないようにする。
席はフリーでも個人ロッカーは必須となる。重要な資料を管理する機能を持つ。
※インタビュー時はマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを確保しております。