コロナ禍で急速に浸透した働き方である「テレワーク」ですが、大手企業による完全テレワーク廃止のニュースも聞こえ、今後の動向が気になる人も多いでしょう。
ここでは、テレワークが今後どうなっていくかを考えたいと思います。
テレワークを廃止する理由
2023年09月12日東京都が発表したテレワーク実施率調査結果 9月によると、テレワーク実施率は、緊急事態宣言下の65%から45.2%に現象しています。
テレワークを廃止する理由にはどのようなものがあるでしょうか。
- ・コミュニケーションが取りにくい
テレワークでは、「あれはどうしたらいいですか」「あの人に聞いたらどう?」「こういうやり方だと早いよ」というような雑談から始まるコミュニケーションが取りにくいといえます。そのため情報と空気感の共有ができず、結束や成長に不利益であるという考え方があります。 - ・社員を管理しにくい
管理職からすると、社員の顔が見えない状態では管理に不便ということがあります。また従業員の勤務態度が見えないため、さぼりなどの不安がある場合もあります。 - ・情報漏洩やPCのウィルス感染等セキュリティのリスクがある
オフィスで管理されたネットワークにつなぐのと比べ、それぞれの自宅などで行うテレワークはセキュリティ上の不安があります。
多くはこれら3点を理由として、テレワーク廃止を決めているようです。
働き方改革によりテレワークが推進されるようになった段階で導入を考えていた企業でも、コロナ禍で必要に駆られて実際にやってみたところ、自社には向いていない、思っていたように効果がなかった、というような実像が見えてきたというとこともあるようです。
テレワークを経験した人は今後も継続を希望。就職情報でも重要に
しかし、テレワークを経験した従業員の方は、多くが継続を望んでいます。国土交通省が発表したテレワーク人口実態調査によると、「雇用型テレワーカーのうち、約87%がテレワークの継続意向がある」という結果が出ています。通勤ストレスがないこと、家族のための時間や自分の時間を取りやすいことなど、ライフワークバランスを確保できることが大きな理由の一つでしょう。また、テレワークをやってみたところ「オフィスにいるより生産性が上がった」という人も多いようです。そういった人たちは今後もテレワークを希望しています。
就職サイトなどを見ると、カテゴリのひとつとして「テレワーク」という項目が追加されており、仕事を求める人たちが多くテレワークを求めていることが伺えます。実際、テレワーク可の企業が人気な傾向にあるようで、今後の求人を有利に進めるにはテレワークというファクターは強みになるといえます。
オフィス回帰による企業のデメリット
このような背景から、出社を増やす・完全出社によって発生する、もしくは発生したデメリットは以下のようなものです。
- ・通勤時間を取られるようになり、心身の不調に繋がる
特に都市部は、通勤ラッシュが復活しています。満員電車に一定時間揺られることが日常に戻ってくれば、テレワークを経験しているならなおのこと強いストレスになりますし、そこで消費される時間が活用できないことに苛立つ場合もあります。そこから心身に負荷がかかり、不調につながっていくこともあります。 - ・テレワークが必要な従業員にとっては転職のきっかけになる
子育てや介護など、テレワークであるために回せていた家事が、出社しなければいけなくなったため回らなくなり、転職を考える人が出るという例があるようです。またテレワークの方が集中できたタイプの人にとっても、今後出社しなくてはならないことが苦痛に感じられ、転職につながってしまうといったこともあります。 - ・会議室や座席が不足する
テレワーク期間にオフィスを縮小してコストカットを図っていた企業の場合、いざ全員出社となると座席が足りなかったり、ミーティングや来客対応の場所が足りないといった状況が発生します。 - ・出社による生産性の低下
テレワークであれば電話応対や来客対応は最低限ですんでいたのに、出社したとたんそれらの業務が発生し、結果生産性が低下するという例もあります。人によっては、周囲の気配や雑音が気になって作業効率が下がることもあります。 - ・求人市場において不利
先に述べたようにテレワーク希望者が多くなっている現在、テレワーク不可であることによって優秀な人材が応募してくれる機会を減らしてしまう可能性はあります。
ハイブリッドワークが増加傾向に
完全テレワークを廃止する企業の多くは、出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークへの移行を実施しています。仕事とプライベートのメリハリがつきやすい、コミュニケーションが円滑になるなどの、出社によるメリットは確かにあるので、テレワークのメリットと同時に手に入れるためにもハイブリッドワークは有効です。座席が少ないといった問題にはフリーアドレスやフレックスの導入で対応すればクリアできます。テレワークの問題点をカバーできるツール等の強化を進め、出社時のストレスを軽減し、フレキシブルに対応できる体制を実現していくのが今後の課題となるでしょう。
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「働き方の未来2035」
厚生労働省が2016年に発表した「働き方の未来2035」というレポートがあります。これは2035年の日本の働き方を予測したもので、この中で、テレワークに関してはこのように記されています。
3.一人ひとりが輝く2035年における働き方
3.1 時間や空間にしばられない働き方に
かつて、インターネットやモバイルがなかった時代には、多くの人が同じ部屋に同時に集まり、一緒に仕事をしなければ、ほとんどの作業が進まなかった。しかし、今や情報技術が大きく進展し、異なる空間にいても、ネットを通じてコミュニケーションをすることができるし、共同作業をすることが可能である。また、必ずしも同時刻に作業をしなくても、ネットワーク上に作業の記録を残しておくなど工夫をすることで、共同作業もできるようになった。こうした流れは2035年に向けてさらに進むことになる。(中略)2035年には、各個人が、自分の意思で働く場所と時間を選べる時代、自分のライフスタイルが自分で選べる時代に変化している事こそが重要である。技術革新の成果はそのために積極的に活用されるべきだ。
さらに、テレワークに限らず企業、社会の意識そのものが変化し自由な働き方を実施していると予測しています。
2035年まで10年と少しという今、このレポートの中のかなりの部分が実現されつつあることが分かります。
テレワーク、そして企業、社会の今後
テレワークは今後も働き方の一つとして普及していくでしょう。しかしそれは画一的に全ての企業がそうであるわけではなく、それぞれの企業ごと、もしくは部署ごと、そして従業員ごとに働き方を考え、実行していく必要があると考えられます。今後は、完全テレワークなのか、ハイブリッドワークなのか、完全出社なのか…それぞれの企業にあったやり方を実行し、従業員はより自分が働きやすい環境で働くことを選べるようになっていくでしょうし、なるべきと言えるでしょう。